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登録日:2016/02/12 Fri 02 34 55 更新日:2023/12/26 Tue 23 14 36NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 DMM LOW Lord of Walkure エロゲー オンラインゲーム カードゲーム ゲーム サービス終了 スマホゲーム ロードオブワルキューレ 基本(重要)無料 Lord of WalkureとはDMM.comから配信されていたオンラインゲームの一つである。スマホ・PC両方でプレイ可。 ジャンルは「カードバトルRPG」。基本無料だが、当然のごとく課金要素もあり。 X指定版と全年齢版の2種があり、ア~ン♡なシーンの有無及び一部のカードイラストの差異(B地区の有無)で区別される。 ただしプレイ前にDMMの会員登録が必要なため、18歳未満はどちらにせよプレイ不可。 ゲームの大まかな内容としては、妖魔に囚われた特別な力をもつ女の子(+α)たちを助け出し、 彼女らをワルキューレとして覚醒させて世界平和のため共に戦うというもの。 2018年12月10日、多くの騎士に見守られながら約6年続いたサービスが終了。 このサービス終了までの流れはある意味で伝説となっている。サービス終了のページを参照のこと。 しかしその後も同じ開発会社の作品にコラボとして度々登場している。 【騎士】 ゲーム内における、プレイヤーの分身で、通称騎士様(kssm)。 名前の設定はできるが作中のセリフなどで呼ばれることはない。 ワルキューレたちからの呼び名は騎士様、あなた、マスター、あるじ、お兄ちゃん、あんちゃん、お前、下僕、クソ虫などなど。 登録時に髪型・肌色・目・口の形を選んで3等身のアバターを作ることができる。 ムフフなシーンのCGでは、バッキバキの腹筋とご立派様が確認できる。 ステータス 騎士自身の戦闘関連のステータスはレベルをいくら上げても、MP以外は上昇しなかったりする。 攻撃力や防御力などはすべて装備依存、強力なカードを装備するには相応のカリスマが必要。 そのためゲーム始めたてでも課金ぶっこんで強い装備を入手すればあっという間にトップクラス…という訳にはいかない。 クエストの進行などに必要な体力、ボスや他プレイヤーとの戦闘で消費するフォース、デッキの構築に不可欠なカリスマは レベルアップ時に付与されるボーナスポイントを割り振って上昇させていく。 この時あまり偏った割り振りをすると後のプレイに差し支えるのである程度バランスよく。(やり直し用のアイテムは要課金) 装備 装備箇所は右手・左手・体・指・首の5箇所。 指・首以外の装備品はそれぞれデザインがあり、装備すればアバターに反映される。 ただし何も装備してない場合でも、普通の服を着た状態になるだけである。 右手なら剣や杖、左手なら盾やサブウェポン、体はもちろん服や鎧など。いかにもゲームの装備品といったところ。 ただし中には海パンやバーベキューセット、アニメーション付きで爆発するネコなど完全にネタに走ってるものもある。(特にイベントの限定品で) この部分は開発を担当した企業が展開していた別ゲームからの移植であり、元のゲームはネタ装備が豊富であったことに由来する。 それぞれの装備には物理(or魔法)攻撃力・物理(or魔法)防御力・クリティカル補正・属性・バランスと 色々な値が設定されている。 攻撃力…物理or魔法の数値が高い方のみが採用される。(例:物理攻撃力1000・魔法攻撃力1200の場合、常に攻撃力1200の魔法攻撃を行う) クリティカル…その名の通りクリティカルの確率が%単位で上がる。最大50。 バランス…ダメージの振れ幅。数値が大きいほどダメージの振れ幅が大きくなる。最大50。 属性…火・水・風・地の4種類。数値が大きいほど弱点属性で攻撃した際のダメージが%単位で上がる。 他にも装備制限という項目もあったが、結局サービス終了まで制限がある装備なんて一切出てこなかった。 戦友 他の騎士と最大30人まで戦友という関係を結べる。 ギルドのように1つの集団を作るのではなく、あくまで1対1のつながり。 クエスト進行中に出現する大ボスを協力して退治することができる。 メッセージのやり取りもできるが、どれだけ活用するかはまあ……人次第。 大ボス退治のために一時的に登録する戦友を、プレイヤー間では傭兵と呼んでたりする。 【カード】 デッキにセットして戦闘に使用できる。それ以外は別のカードの餌にしたり売り払ったり。 セットするにはカリスマが必要で、これが足りないと強力なカードが使えない。 描かれているのはモンスターやなぜか道具のようなもの、そしてもちろん女の子。 モンスター レアリティは大抵が最低ランク。最序盤は別として戦力には全く使えず、餌や売却要因としても微妙。 普通に考えたら完全なハズレ。ただし一部イベントで重要になったモンスターカードもあったりした。 ただしこのモンスターカード、女性形のものは後にワルキューレとして昇格する例も多い。というか殆どされた。 それどころか男性もしくは人外の姿をしても美少女化するパターンさえある。 例)江戸時代の装束を身に着けたタヌキ→タヌキに変身していたケモミミの美少女 首なしの鎧騎士→ぶかぶかの鎧を無理矢理着ていたチビっ子 ボール型の化物→同じ形の被り物をした恥ずかしがりの美少女 本 餌となる宿命を背負ったカード。 育成の効率を上げるために、本に本を食わせてさらにそれを女の子に食わせるという謎現象がしょっちゅう起こる。 間違えて女の子を本に食わせてプレイヤーが崩れ落ちるといった悲劇もまれによくある。 ちなみにデッキに組み込むことも一応可能だが、必要なカリスマの量が尋常じゃないため デッキに組み込む人なんてまずいなかった。 ワルキューレ このゲームの目玉。多種多様な女性キャラ(+α)が描かれている。 同名のカードを融合させることで進化し、2段階の進化でお楽しみシーンが解禁される。 要するにお楽しみのためには同名カードが4枚必要ということ。(一部例外もあり) 詳細は個別記事にて。 【ボス】 クエスト進行中に出てくるザコモンスターより遥かに強力な敵。 もちろん、倒せば相応の見返りはある。 大ボス クエスト進行中、ランダムに出現する強敵。 こいつとの戦闘は一方的にHPを削るだけのものだが、そのHPが一部例外を除きひたすら多い。 最序盤のやつ以外はフォースをすっからかんにしても一人で倒すのはかなり厳しい。そこで戦友の出番である。 倒せばアイテムや武器、餌カード、そして低確率でワルキューレカードをゲットできる。 戦友が発見した大ボスを救援要請に応じて攻撃しても、ややグレードは下がるが報酬は貰える。 ただしボスごとに報酬獲得のため、最低限与える必要のあるダメージ量が決まっている。 イベント中に期間限定の大ボスが出現することがあり、 ボスを追い払うアイテムを活用するなどして限定ボスを集中して狩るプレイヤーもいた。 この手のボスを倒すことでしか手に入らないワルキューレもあるので 見つけたら最優先でフルボッコにされる運命を背負っていた。 2016年前半に専用アイテムを消費しての召喚でしか出現しない大ボスが登場した。 クエストボス 各クエストで全てのステージをクリアすると出現する。グラフィックは道中ザコの使い回しがほとんど。 大ボスと違い、属性の相性や必殺技の発動率など一切考えなくてよく、戦うのに消費するものもない。 ただし戦友の力は借りられず、しかも1度の戦闘で倒しきらないと全回復してしまう。 最新のクエストで出現するものなどは無課金で揃えられる最大限の装備とワルキューレで挑まないと厳しいレベルだったりしてけっこう厄介。 倒せば初回のみそこそこ貴重なアイテムや、限定のワルキューレが手に入る。 逆に一度倒してしまえば、あとは完全に無用の存在。 討伐ボス 討伐戦団という最大10枚のカードからなるデッキで挑む。戦闘時にはクエスト同様に体力を消費する。 登場する日のうちであれば任意のタイミングで挑めるが、他のボスと違いガチで攻撃してくる。こちらのHPが尽きれば当然負け。 このボスとの戦闘でのみ発動するカードの能力やデッキの順番、ボスの行動パターンなども絡んでかなり複雑な戦いになる。 正直いって、このゲームで一番頭を使う要素。 最上級のボスともなるとかなり手強く、少々の課金プレイヤーでは手に負えないことも。 期間限定討伐ボスはランクの数字から想定されるより遥かに強いというランク詐欺状態のものがほとんどで、他種イベントより限定アイテムがまともに手に入りにくい。 【主なシステム】 クエスト ゲームで基本となる作業。特別な条件を満たしたりする必要は殆ど無く、ただオートの戦闘で道中ザコを狩っていくだけの簡単なお仕事。 モンスターとの戦闘は3回で1セット。セットごとにアイテムやカードを拾え、既に出ているのでなければランダムで大ボスも出現する。 あんまり装備やデッキがショボいとザコも倒しきれず一旦終了となるので育成・強化も同時に進めよう。 1クエストに付き5~15程度のステージがあり、最後にクエストボスを撃破すればクリア。 常設クエスト、もしくはメインクエストと呼ばれるのはその名の通りいつでも挑戦可能。 順番にクリアすることでゲームのストーリーも進んでいく。 一度クリア済でも再挑戦は可能。特に高値で売れる装備や大量に必要なアイテムが出るステージは何度も周回することになるだろう。 イベントクエストは一定期間のみ設置される。難易度はメインの序盤からやや進んだ~中間程度。 ほぼいつも何かしらのイベントクエが設置されているのでメインクエを進める暇が無かったりもする。 調査戦団 最大8枚のカードでデッキを作り、宝探しに出かけさせる。 デッキに入れたカードのコストや向かう場所によって経費がかかるのだが、これが結構な出費。(ゲーム内通貨だけど) うまく探索が成功すれば結構な量のアイテムや装備、カードが手に入る。 追加されたエリアの中には低レアリティや無進化のカードしか入れないところもあり、しかも新エリア追加の為にはそこのクリア必須だったため、高レアリティメインの課金プレイヤーに強烈なカウンターを食らわせた事も。 討伐戦団 内容は討伐ボスの項を参照。 対人戦 プレイヤー同士で対戦できる。といってもリアルタイムのバトルではなく、同じ対戦ランクのプレイヤーがランダムに選ばれるというもの。 参加するときはフォースが消費され、一定回数勝利すればクリア、賞品が手に入る。負けてもグレードは下がるがもらえる。 フォースが余りまくってるときなどは、ワザと装備ナシデッキにカード無しで挑んで連敗しまくって消費する手もある。 時折、ヴィーグリーズというイベントが開かれる。 プレイヤーはワルキューレの名を冠したサークルに別れ、 対戦によって入るポイントを競うこととなる。 ポイントが一定数に達するごとに入手できるアイテムと交換で限定カードなどが手に入る。 更にサークル内や総合ランキングでポイント上位に入るとかなりレアなアイテムや特製カードが手に入るが、 この領域に来ると重・廃課金プレイヤーの巣窟である。 錬金術師の館 ワルキューレの一人、錬金術師エリシアが管理する場所。 アイテムを使用して装備品やよりレアなアイテム、カードの強化に必要な素材等を作る事ができる。 神殿 以下の2種類がある。 神殿グラズヘイムワルキューレの一人であるアルカナが管理している神殿。最終進化かつレベルマックスのワルキューレを更に一段階進化させる、限界突破を行う場所。元カードよりステータスが上がる他、調査戦団や討伐戦団で発動する特殊能力が追加もしくは強化される。システム実装後に登場したカードはほぼ全て限界突破可能だが、時々過去のカードにも適用されるようになる。一度戦力外にした子が再び返り咲くチャンスを与えてくれる。(だから昔のカードをなかなか整理できなかったりもする)(*1)サービス中盤以降、同じカードでも通常の限界突破と期間限定アイテムを使った特殊な限界突破が登場し、当然後者の方が能力は高くなる。最終的には究極進化したカードすらも限界突破できるようになり、火力インフレ待ったなしだった。 神殿グリトニル最上級レアリティの指定されたワルキューレ2種の最終進化形を2枚融合させて新たなカードにする究極進化を行える場所。進化後は2人のワルキューレが絡みあったイラストに変化する。進化時にはどちらのカードをベースにするのか決める事ができ、選んだカードの名前と属性になる。言わずもがな戦力としては超一級品で、入手時にイベントまであるのだが、重・廃課金プレイヤー以外にはハッキリ言って無縁…かと思われていたが、2016年プチレジェンドイベントで期間限定アイテム等と対象カードが交換できる機会が登場し始めて触れる機会が増え、最終イベントではナヴィ作成のために多くの騎士がお世話になったと思われる。余談だが、この神殿を管理しているのも女性で立ち絵もあったのだが、エリシアやアルカナと違い最後までカード化されなかった。 街会話イベント ゲームの基本画面で、ワルキューレとの日常が見れるというもの。 会話と入っても実際はショートストーリー。きっちりボイスも再生される。(スマホ版は聞けない) 対応しているワルキューレを戦闘に出すことで親密度が上がり、一定値に達すると新たなストーリーが解放される。 全てのワルキューレに導入されているわけではないが、人気のあるキャラは概ね一通り導入されている。 初会話時や好感度ランクが上がった際に流れるロングと、街の画面にが表示される度にランダムで流れるショートの2種類がある。 大深度冥宮ニーヴェルング 2016年4月に実装。 長時間かけてダンジョンに潜り続け、多くのお宝を手に入れるモード。 装備やカードを選択して組み込みパーティーを結成、それをダンジョンに送りこんでスタート。 15分ごとに深度増加・HP減少と共にイベントが発生し、より深くにワープしたりHPが回復したりアイテムが手に入ってストックされたりする。 特定のキャラを連れて行った時のみ発生するイベントも多く用意されているが、必ずしもプラスになるとは限らない。 5回までHPの全回復ができて、HPがなくなると帰還してストックしたアイテムが入手できる。また1回の進行スピードを増加させるアイテムも存在する。 何度か期間限定ダンジョンも実装されたが、特定のカードをデッキに入れないと100%の確率で即死イベントに遭遇するなど強烈な内容のものも。 【最後に】 過度な課金、掲示板で他プレイヤーと喧嘩になるなどの事態には十分に注意してください。 ワルキューレの騎士の名に恥じない態度で、プレイを楽しみましょう。 追記・修正は世界平和を求めて旅に出る前にお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 王子や団長、社長みたいなネット上でのプレイヤーの略称はkssm(騎士様の略)だっけ? -- 名無しさん (2016-02-12 11 38 13) プレイ初期段階に入手可能なワルキューレの中に男の娘や筋肉娘がいるという攻めの姿勢すき -- 名無しさん (2016-02-12 17 44 24) これ面白い?面白そうだと思ってちょっと調べてみたら性能のインフレがかなり早いみたいなんだけど・・・。 -- 名無しさん (2016-02-12 17 56 24) もうサービス開始から結構経ってるからシステム自体は古いし、上位陣は遥か彼方にいると思うよ。新規におすすめできる段階は過ぎたと思う。 -- 名無しさん (2016-02-12 18 50 17) 3年間やってる。ゲーム性は薄いけど、キャラクター性は高いと思う。最近じゃバトルマーチオブワルキューレなる派生ゲームがリリースされたようで。多分思った以上にキャラ商売が利いたから、DMMとしてはゲーム性を持たせた決定版を作りたかったんだろうな。古参としては両立してほしいところ。 -- 名無し (2016-02-13 22 06 42) パズルオブワルキューレが消えて以来、どうも派生に手を出す気にはなれない……。 -- 名無しさん (2016-05-07 22 05 53) バトマチ&ハーレムシェイク・オブ・ワルキューレは終了しました -- 名無しさん (2016-08-28 23 29 15) 派生の方が先に消えたってことは、やはり頭を使わずにできるところにこのゲームの真価があったということなんだろう。 -- 名無しさん (2016-11-16 15 25 30) 何故か8月中旬に開始予定だったイベントが急に中止になって、9月の今でも停滞中。このままサービス終了になったりしなければ良いけど… -- 名無しさん (2017-09-05 23 22 23) 更新される訳でもなくサービス終了する訳でもないまま半年近く放置状態という妙な状況。何が起こってるんだこれ… -- 名無しさん (2018-03-03 16 50 38) 死亡確認… -- 名無しさん (2018-06-11 16 23 25) また古強者が一人逝ったか -- 名無しさん (2018-06-11 16 37 36) CGを配布中とのことです。 -- 名無しさん (2018-06-14 14 41 06) 最近はふるーつふるきゅーと!でコラボが行われることがあるくらい。 -- 名無しさん (2021-08-20 01 20 40) 更にエンクリにもナヴィ(とカードイラストに三天使)が -- 名無しさん (2022-01-07 06 43 19) DMMの「クレジットカード登録で500ポイント」のバナーには未だに本作のキャラが居座ってる。 -- 名無しさん (2022-01-07 08 13 52) 名前 コメント
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前ページ力を求める使い魔 さて、ルイズが魔法を練習しては彼に叩きのめされる生活をしている間。 彼がいったいどんな生活をしていたのだろうか。もちろん、ルイズから食事を恵んでもらったわけでもない。 かといって知り合いもおらず何か伝手の一つも持ってない。となると、取る行動は一つ。 厨房の品を勝手にいただくことだ。当然、窃盗とも言うべき行動だが、元々そんな倫理観はいまさら持ち合わせていない。 文字と食事を取るために、彼は厨房に毎日通っていた。 最初の数日は、忍び込んでこっそり食べ物を失敬していたわけだが…… 初めてやって来た異郷の地でそのような行為が 何度もうまくいくはずもない。 数回目であえなく厨房の連中にばったり出くわす羽目になる。しかし、学院に突き出されることはなかった。 いや、そもそもただの平民であるコックやメイドでは彼をつき出すこと自体、不可能なのは当然なのだが…… 向こうはそう言うそぶりもなかった。 どうやら彼は妙なところで有名だったようで、コックの一人がこんなことを言い出した。 「なああんた、あのうわさの召喚の魔法で呼び出された平民か?」 とりあえず召喚で呼び出されたことは確かなので「まぁそうだ」と同意しておいた。 魔法が使えるのだから、この世界では貴族かもしれないが、とてもそんなガラじゃあない。 それに、貴族などという腐った連中と思われたくもなかった。くだらない見栄や体裁ほど、彼からすればくだらないものはない。 彼の答えを聞き、厨房の連中は何を勘違いしたのか顔を見合わせ、頷き合う。 太った、周りより仕立てのよい服を着た男が、そばのメイドに手を振って何か合図をした。 少しして、運ばれてきたのは暖かいスープ。 太った男は、うんうんと頷きながら 「あんた、苦労してるんだろう。なにせ貴族の癇癪玉は猫より小さいからな。なに、困ったときはお互い様だ」 かくして、彼は食事にありつけるようになった。 簡単なまかない飯だとコックやメイドは言っていたが、これがうまい。 よく分からないゲテモノの肉や、真空パックの常温保存食とは天と地の差だ。 東京での自分の食生活の悪さを今更ながらに感じながら、スープをすする。 子供の時に母親も死に、父親が飲んだくれていた彼からすれば、他人の手料理などほぼ初めて口にしたといってもいい。 そんな家庭環境もあって彼は極端な力の信奉者な上人付き合いの仕方はほとんど分からないが、決して常識知らずではない。 表に出すのは癪だが、確かにありがたく思った。 「……うまい」 「おかわりもありますから、ゆっくり食べてくださいね」 スープを持ってきたメイドが、がっつき気味にスープをすする彼を見て苦笑した。 「お腹がすいてるんですね。ご飯、もらえなかったんですか?」 「貰うも何も……俺はあんなガキの使い魔になんて誰がなるか。そんなもの願いさげだ」 「願い下げ……って貴族に逆らったんですか!?」 目を丸くして、メイドが言った。その声を聞き、周りのコックたちもこっちを見ている。 やはり、この世界にとって貴族は――魔法を使えるものは絶対の存在らしい。 「当たり前だ。俺は俺の好きなようにやる。自分より弱い奴の言うことなんぞ誰が聞くか」 おかわりで皿を差し出す。彼の言葉を聞き周りがざわめく。 うまい飯を食って知らず知らずのうちに上機嫌になっていたのか、彼は口数が増えていた。 「第一、魔法が使えるからって人よりえらいと思ってる腐った奴らなんて気にくわねぇ。 力のある奴が好きにする道具として魔法があるんだろうが。結局家柄が何だのと……くだらねぇ」 「魔法が……こわくないんですか?」 おそるおそるといった感じでメイドがたずねる。 「当たり前だ、あんな魔法も満足に使えないガキ、恐ろしくもなんともない」 ―……少なくとも今は、と内心付け加える。ああいう目をした人間がどうなるかは自分がよく知っているからだ。 自分の思い違いでないなら、自分が悪魔と合体したように、何かのきっかけで化ける日が来るかもしれない。 ごっそさん、と手を合わせ、イスの背もたれに体を預ける。 食器を提げに来たコックが、背中をバンと強く叩いた。 ―「そりゃ豪気なことだ!」 「あんた凄いな!」 「気に入った!また来いよ!」 めいめいが好き勝手彼を小突いたり、話しかけたりしてきた。 彼が貴族を嫌うように、平民たちも貴族を嫌っているのだろう。 コックやメイドたちは、平気でそれを否定した彼を気に入ったようだ。 食事以外でも、厨房に言っては暇そうにしている連中から文字を習った。 何しろ、文字が分からないことには、本も読めない。 幸い図書館で、人の良さそうなメイジのガキに脅しつけて、1冊初級の魔法の本を手に入れることはできた。 あとは、厨房に入り浸ってひたすらそれの読解と理解に専念した。 平民が魔法を使うなんて無理だと言われたが、彼は無視していた。最初からあきらめ受け入れるのは愚か者……と彼は思う。 ふと、頭の片隅に運命を受け入れて生きることを選んだ白い友人のことを思い出す。 自分は今こうしてなぜか生きているが、奴は今どうしているのだろう。やはり、あいつに負けたのだろうか。 顔を小さく振る。自分は、負けたのだ。あのカテドラルでの神魔の全面戦争がどうなろうと関係ない。 「あ、そこ間違ってます。その文字は、こう書くんですよ」 「……ここか?」 どうやら、余計なことを考えすぎていたらしい。書き取った文字がおかしくなっている。 黒髪のメイドが、間違いを指摘した。 彼女は文字が読み書きできるメイドの一人らしい。 ここで文字を彼に教えているコックやメイドの一人だ。 「……難しい」 「最初は、なんでもそうですよ。ゆっくりいきましょう」 くすくすと笑うメイド。 彼は顔をしかめたまま、本の文を睨みつけた。 読めなくて眉を寄せているのではない。読めることに違和感を覚えてそうしてしまう。 なぜか、ある程度学ぶたびに、一気に言葉が、頭の中で翻訳され、理解できるのだ。簡単な読み書きは数日で可能になったが ……その事実に頭をひねる。自分は、お世辞にも、秀才とはいえない。なのに、この習得の早さは何だ……? ふと浮かんだ疑問を頭の片隅に追いやり、本のページをめくる。 「それにしても、勉強熱心ですね」 「……強くなるために必要だからな」 相変わらずぶっきらぼうな態度で答える。 一歩間違えば、横柄とも高圧的とも言える態度だが、これが彼の他者への基本的な態度だ。 だが、決して傲慢でもなければ悪意を持っているわけではない。 主従関係や力の優劣が絡まない限り、横のつながりに関してはわずらわしいと思いながらもきちんとこなす。 恩を受ければ、借りを作るのを嫌う性格もあり、「受けっぱなしは性に合わない」と、裏方の手伝いを申し出ている。 本人が聞いたら激怒するだろうが……臆病な心だって奥底にはある。 何も普通の人間と変わりないのだ。いや……本質的には人よりも弱いかもしれない。 芯は悪い奴じゃないが、風変わりなひねくれ者。 彼の本質とは当たらずとも遠からずなこの評価が、厨房の人々からの評価だった。 ……力に対する渇望が底なしのことを知らなければそういう評価に落ち着くのは無理もない。 「そろそろ、食事の仕度もあるのでここまでにしましょうか」 メイドが立ち上がる。続いて、彼も無言で立ち上がる。今日の手伝いは、デザートを運ぶことだった。 ここで、ちょっとした揉め事が起こる。 ――食堂から聞こえてくる声。 「君の軽率な行いで香水の壜なんかを拾い上げたおかげで二人のレディの名誉に傷がついた。どうしてくれるんだね?」 「……知るか」 ギーシュという金髪の派手な生徒が落とした壜が、彼の足に当たったのだ。 それを気まぐれで蹴ってよこしたところ、どうやら二股をかけていたらしく、その壜が原因でそれが発覚。 ものの見事にその恋人両方に振られたのだ。 「自分に酔ってるガキが偉そうに。二股かけていたのはお前だろう」 ギーシュの友人たちがどっと笑った。 「その通りだギーシュ!お前が悪い!」 まったくその通り。当たり前すぎる正論を言い返せず、顔を赤くしたギーシュが、デザート配りを再開した彼に言った。 「そういえば君はあの『ゼロのルイズ』が呼び出した平民だったね。 平民に貴族の機転を期待したボクが間違っていた。今回は許してあげよう」 ギーシュからすれば、プライドを維持するための精一杯の台詞だった。 しかし、それを受けて彼は一言。 「……馬鹿は死ななきゃなおらねぇってのはマジだな」 この一言が火種だったいざこざに火をつけた。 ギーシュが決闘を持ち出し、もちろん彼もそれに乗る。周囲のコックやメイドの引きとめも完全に無視。 売られた喧嘩を断る理由はまるでない。あれよあれよと話はトントン拍子で進み、二人はヴェストリの広場で立っていた。 周りは、暇な生徒であふれかえっている。 「逃げずに来たことはほめてあげようじゃないか」 そう言ってギーシュがバラの花を振る。 たちまち、散った花びらの一枚が舞ったかと思うと、 甲冑を着た女戦士の人形へと変化した。 「紹介しよう。これはボクのゴーレム、『ワルキューレ』だ。 ボクはメイジ―――― 」 蕩々と語るギーシュが最後まで言葉をしゃべり切る前に、火炎弾がワルキューレを叩く。 金属に火炎弾が高速でぶつかり、爆ぜる音が周囲に響き渡る。 「―――ドーン、って?」 直撃し関節が歪んだのか、ガクガクとしているデク人形を、彼は蹴り倒した。 「終わりか?」 突き出した手で肩を触り、首を回してコキコキと鳴らす。 ギーシュの顔から血の気が一気に引く。周りの生徒たちは息を呑んだ。……ただ一人の生徒を除いて。 慌ててもう一度バラの花を振ると、今度は6体のワルキューレが顕れた。今度は全部槍のような武器を持っている。 そのうち2体はギーシュの側に、残り4体が彼を取り囲むように陣を組む。 数か多いと判断した彼は、両手を真横に水平にしてあげる。 「マハラギ!!」 ―両手から渦を巻くように炎があふれ、彼の周囲を囲んでいたワルキューレを飲み込んだ。 しかし、その炎をものともせずワルキューレたちは彼へと突っ込んでくる。 「ちィッ!」 一番早く近寄ってきたワルキューレの槍をかわし、懐に飛び込む。そのまま顔面に拳を打ち込んだ。 が、ワルキューレはびくともしない。逆に、こちらの拳がズキズキと痛む。 4体のワルキューレが、まとめて槍をもぐら叩きのように振り下ろす。慌てて転がるように横っ飛び。 どうにかワルキューレたちと距離をとる。 どうやら、マハラギでは威力が足らないらしい。アギは、マハラギと違い炎を一つにまとめて相手に直接ぶち当てる。 つまり、収束した炎に加えて、ぶつかり炸裂する勢いも付加されているのだ。 そのアギでもほぼ倒せるとは言え、全身をゆがめる程度だった。単純な火力総量は同じでも、マハラギでは威力が違う。 加えて、今の自分は人間。『魔人』だったころとは魔力の量も質も劣る以上、力押しは難しい。 力も随分と落ちている。さきほどの拳も、本来なら余裕で粉砕できるはずだった。昔の感覚で拳を振ればあの様だ。 なにか角材などでも持ってくるんだった、と後悔したがもう遅い。 ガシャガシャと間接から音を立て、槍をまっすぐと構える。どうやらそのまま突撃する腹積もりらしい。 「しかたねぇ……」 強く両方の拳を握り、先程よりも多く魔力を練りこむ。 人間となった自分がどれだけ魔法を使えるか分からない以上、無駄打ちや乱発は避けたいところが、そうも言っていられない。 最大火力で、一気に燃やし尽くす! 息を一つ深く吸い込み、魔脈を整える。 全身に練りこんだ魔力を一気に高める。 「吹っ飛べ―――!」 両手から、アギの3倍はある炎球が飛び、前にいたワルキューレを直撃。 瞬時のうちにワルキューレは完全に溶解、いや気化し、膨大な火力が、衝突後空へ伸びる柱となった。 巻き込まれて、当たらなかった周囲の3体も、表面から溶けた青銅が滴り落ちている。 明らかに、動きが鈍るワルキューレたち。単体への最大火炎魔法であるアギラオ。その熱量は凄まじいの一言だった。 「ッよしッ!」 優雅とも言えた装飾もはがれ、見るからに動きの鈍ったワルキューレに、アギを撃とうとし――――― ガツン、と衝撃が後頭部を襲う。受身も取れず、地面に彼は叩きつけられた。 (こっちの火力を見て、全部攻撃にまわしやがった……!?) そういったつもりだったが呂律が回らず、うまく言葉にならなかった。それに、口からはさんざん慣れ親しんだ鉄の味。 倒れた彼を見下ろしているのは、汚れ一つないワルキューレ。先ほどまでギーシュをガードしていたそれだ。 ワルキューレの足が、思い切り彼を蹴り飛ばした。槍を使わないのは余裕か畜生、と内心毒づく。 今度は受け身を取り、その勢いで起き上がろうとするが、足に力が入らず、そのままくずおれた。 (く……ッ! 人間の体はこんなに脆かったのか!?) 魔力、耐力、腕力、そのすべてのあまりのなさに愕然とする。何もかもが、つい数日前と違う。 『魔人』でさえあればこんなもの、マハラギでも一掃できるはずだ。 これほどまで人間だった俺は弱かったのかと奥歯を噛み締めた。 せめても蹴り飛ばしたワルキューレに反撃でアギを一発当てる。上半身が炎に包まれ、膝をついて崩れるワルキューレ。 膝を突いている彼を、先ほどの溶けたワルキューレの一体が顎をつかんで持ち上げた。 残った二体が持ち上げられた彼の両脇腹へ同時に槍を突きさす。 「ぐ……あッ……ああああああ……がぁあああああ!!」 渾身の力で精神力を振り絞る。ゾンビ軍隊に銃で撃たれた時を思い出す。 あの時と違い、仲間はいない。倒れたら終わりだ。決して、意識を手放さない。手放すわけにはいかない。 「調子に……乗るなッ!!」 周囲に再度放たれる炎の渦。あまりにも炎がぶつかるワルキューレたちが近かったため、彼ごと巻き込み燃え上がる。 先ほどのアギラオの溶解のおかげで、マハラギでも喉を握っていたワルキューレの腕が溶ける。 むせるのを堪え、地に落ちると同時にもう一度マハラギ。 側にいた溶け残りの3体では、流石に2発連続のマハラギには耐えられず、崩れていく。 フラフラと立ち上がる彼の前の数メイル前に、最後に残った1体のワルキューレ。 最悪なことに傷一つないワルキューレだ。 「驚いたよ!魔法を使えるなんて」 驚いた、という割には声が明るい。ギーシュは勝ちを確信した声で言う。 「でももうここまでだ。確かになかなかやるようだけど、僕のワルキューレの敵じゃなかった!」 既に過去形かよ、と思ったがそんなことをしゃべるのも億劫だ。 脇腹の傷からは、血が流れ続けている。手加減を知らないのか、相当に深い。 炎で無理に吹っ飛ばしたせいか、槍がだいぶ腹の中をかき回してくれたようだ。 「まだ、だ……俺は負けてねぇ」 血が足りない。かすむ目を開き、震える手を上げ、アギを撃つ。 距離を掴み損ねたのか、意外とワルキューレが身軽だったのか、アギはワルキューレのすぐ横で爆ぜる。 そこが、限界だった。 勝手に意識に反して体が倒れる。わき腹から大量の血が流れている。出血多量が原因だった。 ギーシュの目障りな笑い声が耳を叩く。 「負けて……ねぇって言ってるだろ!」 両腕で上半身を支え、顔をギーシュに向ける。そのとき、生徒の輪の中からよく通る声がした。 「ギーシュ!」 ―輪の中からでてくる影。それは―――ルイズだった。 「ああルイズ、ちょっと君の使い魔を借りているよ」 「そんなことどうでもいいわ!今すぐこの茶番をやめなさい!」 彼とギーシュの間にルイズは立つ。 「決闘は禁止されるはずでしょ!」 「それは貴族同士であって、貴族と平民の間じゃ適応されないね」 「それでもよ! ここまでする必要が本当にあったの!」 ギーシュに怒りをあらわにするルイズの姿。 ――ぐちゃぐちゃうっせぇなぁ 遠くなる意識の中、ぼんやり2人のやり取りを見ていた。声は確かに届いているがほとんど聞いていなかった。 そういや、この状況、つい最近あった気がする。しばらく考えて―――思い当たった。 ――そういやあのガキの時の裏返しだな。あれだけ言った俺が、これじゃあな…… そう、この世界に来て初日。立場の逆転はあるがルイズと戦ったときと同じ。 『使い魔にしたいなら、俺に勝ってみろ。 ……力のない奴を相手にしてくれる奴なんて誰もいないぞ』 『……力もないのに、足掻くんじゃない。そんなんで、誰かに認められると思ってるのか?』 『力がなければ、誰も認めてくれない。誰もなれない。悔しいなら強くなるんだな』 でかい口叩いたのに、この始末か。僅かに覚醒する意識。そうだ、勝たなければいけない。 力がなければ、何もできない。怯えて他人の言葉に流され受け入れて生きることになる。 力が欲しい。力が欲しい。力が欲しい。誰にも負けず屈さず怯えることのない力。それを、求め続ける。それが自分だ。 ふと、自分を庇っているルイズを彼は見た。自分と、同じ目をしていた少女を。 ――そうだな…… あれだけ言った俺が、これじゃあな……だから、立たないとな……きつくても…… ――――この生き方が正しいと証明するために。自分の生き方が正しかったと証明するために。 「おい……そこをどけ……ルイ……ズ……」 - 会話に気をさいていたギーシュとルイズが同時に振り向いた。 そこにいるのは、満身創痍でもしっかりと大地を踏みしめ、立ち上がる彼の姿。 「え……今、あたしの名前……?」 一歩一歩、倒れそうでも大地を踏みしめ、彼が歩く。 「あんた、何で立ち上がるの!?もう十分じゃない、あんたは強かったわ、もうそれで十分じゃない!」 彼が腕を上げようとすると、ルイズはその腕をつかんだ。涙もろいのか、その目には涙が溜まっていた。 「もうやめて!もし、魔法を撃ったらもうギーシュは容赦しない!本当に死ぬわよ!?」 「俺は、負けられないんだよ……!」 腕を振り払い、アギを撃つ。しかし、震える腕で放たれたアギは、またもワルキューレの横を抜けていった。 ―ワルキューレが動き出す。右ストレートが彼の顔へ。 「……いてぇ」 倒れるのを必死でこらえる。 「痛いに決まってるじゃない、なんてそこまでするの!?」 さらにワルキューレは彼を殴り続ける。でも、絶対に彼は倒れない。 「それでいいのか……?」 わき腹が叩かれる。血が吹き出た。 「え……っ?」 「弱いままで、負けるだけで、誰にも認められないで、怯えるだけで……いいのか?」 ルイズが、息をのむ。肩が殴られる。骨が砕ける嫌な音がした。頭がまた朦朧とし始めた。 霧がかかったようにはっきりしない。だが、それでもやらなければならないことが彼にはある。 「俺は、力がなかった。誰にも見てもらえなかった。怯えるだけだった。何もなかった。だから、力が欲しかった。 どれだけ弱くても、他人から馬鹿にされても……絶対にあきらめねぇ。俺は、力が欲しい。誰にも負けねぇ力が。 ………そのために、全て捨ててでも、力を手に入れてきた」 もう自分も誰に対して言っているか、何を言っているかのかすら曖昧だった。しかし言わなければならないと思った。 自分のため、自分自身のためにも必ずやって見せなければならない。 今度はローキック。下半身にくる。 「だから、負けられねぇ……負けたら、俺の生き方が嘘になる」 倒れ際に、ワルキューレの頭をつかむ。そのまま、ゼロ距離でアギを撃った。 代償に、手が爛れ、爪がはがれる。 だが、首を失ったワルキューレもまたゆっくりと倒れていく。 「回復魔法に金を取るのか?」 「そうですよ」 「どのくらいかかるんだ?」 「まあ、平民の出せる金額ではありません」 どうやら、精神的なものだけでなく、金銭的な意味でも本当に大きい借りを作ってしまったらしい。 ますますため息が出る話だ。この世界では、科学のかわり魔法が随分と発展している。 おかげで何かとつけて魔法を使っていたのを見て、魔法に関して全てこちらの世界のほうが優れていると思い込んでいた。 まさか、生命線とも言える回復魔法に関しては東京より劣っているとは、誰が想像できるだろう。 思いがけないところで不自由な魔法世界の一面を知ることになった彼は、頭を押さえた。 「俺はどのくらい寝ていたんだ?」 「三日三晩寝てましたよ。その間、ミス・ヴァリエールがずっと看病していました」 足元にころがる小娘に視線を向ける。よく見ると、目の下には大きな隈ができていた。 「………そうか」 人に看病されたのなんて、一体どれくらい前のことだろうか。まるで思い出せない。 母親からも、こんなことをされた記憶がなかった。自分にここまで親身なってくれた人間などこれで3人目だ。 あいつと、奴と……このルイズ。ほとんど突然湧いてきたような自分に何故ここまで? メイドは、銀のトレイに乗ったスープを置くと、 「簡単な私たちに使う飲み薬を持ってきますね」と言って部屋を出て行った。 また、部屋の中は静寂に戻り、ルイズと二人になる。 なんとなくルイズの手に、自分の手を伸ばす。掴んで見てみれば、相変わらずボロボロの手だった。 目新しい傷も目立っている。この3日間も、そうとう魔法の練習をしたのだろう。加えて、自分の看病までしていたのだ。 ……おそらくわざわざ睡眠時間を削って。あれほど辛辣な態度をとった自分を看病しながら。 決して自分の魔法の練習も放り出さずに。 頭を左手でこめかみを叩く。 ちらりと目に入ったのは、手に刻まれた使い魔のルーン。 ルイズのことは、メイジの中でも特異な部類らしく、噂も容易に聞けたので知っていた。 曰く、『ゼロのルイズ』。 一度も、魔法に成功したこともない、それでも決して学校を辞めず、諦めることもない生徒。 スープを一気に飲み干し、またベッドへと倒れこむ。 無駄に、としか思えないほど豪奢な天幕が見えた。 ふと、読んだ本に書いてあったことを思い出した。 『現れた使い魔は、召喚者の性質、属性、気質、秘めた才能などを総合して呼び出す。 故に呼び出された使い魔によって、どんな専門課程に進むのかを決定する』 たとえば、風の魔法使いなら風に関したものだったり、陽気なものなら明るい使い魔だったりするらしい。 決して、適当に呼び出されるわけではないということだ。 自分がどんな人間か考える。昔ならいざ知らず、今なら少しは落ち着いて外から自分も見られるようになった。 結論としては……つまり、こういうことか? こいつには、他人に対する劣等感やそれに反発する心や誇りがあって、そんな力への渇望が自分を使い魔に選んだと。 それとも別の答えがあるのだろうか。使い魔の証らしい左手のルーンをさするが、当然答えはない。 「起きたの!?あんた」 騒がしい声が足元から聞こえた。ルイズが起きたようだ。 「ついさっきだけどな」 肩を軽く回しながら答える。砕けた骨はどうやらくっついているようだ。 無理ができるかは分からないが、当面は大丈夫だろうと、楽観する。ルイズは立ち上がって、ベッドの端――彼の顔の横に座った。 「悪かったな。 ……借りができた」 どんな思惑があろうと、治癒のために手を尽くしてくれたことは確かだ。 はっきりと正面から礼を言うのは、慣れていない。これが、彼なりの精一杯だ。 「別にいいわ。この3日間、色々考えさせてもらったしね」 そういってルイズは妙に晴れやかな顔でうなずいた。 「使い魔の世話をするのは、貴族として当然の義務だもの。当然のことよ」 「……そんな理由でここまでしたのか? 寝首をかいてもよかったんだぞ?」 言葉に彼は眉をひそめてそう言い返したが、ルイズは彼の言葉を無視して言った。 「私は貴族よ。魔法を使えるものを貴族というんじゃないわ。決して敵に後ろを見せない……あきらめないものを貴族というのよ! 今は魔法が使えないかもしれない。でも、必ずつかえるようになってあんたに勝って、きちんと従わせてみせるわ」 はっきりと宣言するように、腕を組んでルイズが言う。そして、ルイズは笑った。 まぶしいほど輝いていて、それでいて獰猛で、どこまでも不敵な笑顔だった。 頭の中でリフレインする言葉。 ―――現れた使い魔は、召喚者の性質、属性、気質、秘めた才能などを総合して呼び出す。 故に呼び出された使い魔によって、どんな専門課程に進むのかを決定する。 やはり自分を呼び出すその前から、根幹としてルイズの望みは自分と同質の―――― 「…………開き直りだな」 「そう受け取ってもらっても今はいいわ。なんと言おうと私は貴族。あんたは召喚された使い魔。 いうこときく、きかないは関係ない。もう一度言わせるの? 使い魔の世話をするのは、貴族として当然の義務よ」 人差し指を立て、念を押すようにルイズはさらにそう付け加える。 「勝手にしろ」 彼は、ルイズを背に向け寝なおした。 ―――口元が少し、ではあるが緩んでいるのを見られたくなかったからだった。 結局、これ以上ルイズとその日話すことはなかった。彼女は満足げに「魔法の練習をしてくる」と部屋を出て行った。 相変わらずの態度だったが、彼は、使い魔としてはともかく、もう少しルイズを見ているのも悪くないと思った。 ルイズは使い魔が彼であることを決して悪いことでないと思い始めていた。 ………左手のルーンに隠された力は、確かに発揮されていた。 前ページ力を求める使い魔
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キューレーネー 【クラス】ランサー 【真名】キューレーネー 【容姿】二頭の猟犬を連れた活発な少女 【その他】中立・善 地属性 女性 【英雄点】40点(ステ25点・スキル15点):令呪1画消費 【HP】25/25 【筋力】A++ 7(8) 【耐久】A 5 【敏捷】EX 8(10) 【魔力】E 1 【幸運】E 1 【スキル1】仕切り直し C 5点:先手判定と逃走判定時、補正値5を得る。 【スキル2】対魔力 C 5点:キャラシート作成時、英雄点5を得る。魔術防御時、補正値5を得る。 【スキル3】健脚 A++ 5点:先手判定時、補正値3を得る。物理攻撃時、補正値4を得る。 【宝具1】『太陽に向かって走れ!アタシが一等賞!』(キュレネ・フルブースト!)1/1 【ランク・種別】C・対人宝具 【効果】先手判定時に使用できる。自身の先手判定の判定値を記録する。 行動順が1番になった場合、次の自身の物理攻撃時、記録した判定値の半分だけ判定値を上昇させる。 【設定】 真名はキューレーネー。槍をふるうラピタイ族の女狩人。アポロンが思わず連れ去って結婚するほどの、武勇と魅力を兼ね備えた少女である。 連れている二頭の猟犬はアルテミスから贈られたものであり、愛称はキュンとティアである(アルテミスの別名に因む)。 健脚であり、メディアによって殺されたペリアースの葬礼徒歩競争では一番であった。 素手でライオンを組み殺すほどの力を持ち、基本槍は飾りでもっぱらキックなどで戦う。 【ネタ】 家事できない系ダメお姉ちゃん! 愛称はキュレねぇ。
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《公開済》SNM001220 シナリオガイド 公式掲示板 合併? 再編? 取り潰し? 明日はどっちだ!? 担当マスター 革酎 主たる舞台 ツァンダ ジャンル 学園生活 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2011-06-03 2011-06-05 2011-06-09 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2011-06-21 - 2011-06-13 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) ワイヴァーンズ/ワルキューレの選手としてシーズン終盤を過ごす。 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 プロ野球選手の厳しい現実に晒されたい。 ▼キャラクターの目的 ワイヴァーンズ/ワルキューレの選手としてシーズン終盤を過ごす。 ▼キャラクターの動機 残るにしても移籍するにしても、十分な成績を残しておく必要があるから。 ▼キャラクターの手段 プロ野球選手として、シーズンの残日程に臨みます。 ワイヴァーンズ/ワルキューレの存続に尽力する。 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 赤字覚悟といわれる球団経営の現実の厳しさに晒されたい。 ▼キャラクターの目的 ワイヴァーンズ/ワルキューレの存続に尽力する。 ▼キャラクターの動機 首になるのなんて真っ平だから。 ▼キャラクターの手段 今の所属球団を存続させる為に、あの手この手を考えて頑張ります。 SPB臨時職員に応募し、新球団発足に立ち会う。 +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 球界再編の厳しい現実を見ておきたい。 ▼キャラクターの目的 SPB臨時職員に応募し、新球団発足に立ち会う。 ▼キャラクターの動機 プロスポーツビジネスに何となく興味があったから。 ▼キャラクターの手段 SPB臨時職員として雇われ、新球団発足に至るまでの経緯を見たい。 その他補足等 [部分編集] 【タグ:SNM ツァンダ 学園生活 正常公開済 革酎】
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前ページ次ページ爆炎の使い魔 ヴェストリの広場は魔法学院の西側にある広場である。西側にあるそこは、日中でも日があまり差さない場所のため、普段はあまり人もいない場所となっている。 しかし、本日はギーシュの決闘の噂を聞きつけた生徒たちで、広場は溢れ返っていた。 「諸君!決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げると周りから歓声が上がる。 「ギーシュが決闘をするぞ!相手はルイズが召喚した、あの平民だ!」 そんな声に対して、ギーシュは腕を振っている。 ひとしきり歓声に対して応えた後、ヒロのほうを振り向いた。 ギーシュはヒロのほうをぐっと睨む、しかしヒロは目を瞑ったままで立っている。 「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」 「・・・・」 何も言わないヒロ、その無言を怯えと受け取ったのだろう。ふふふ、と笑いながらと薔薇の花をいじっていた。 「さて、では始めるか」 「まて」 無言だったヒロが言葉を放つ。 「なにかね?」 「決闘だそうだが、何か明確なルールはあるのか?どうすれば勝ちになる?いや、違うな、どうすれば貴様は負けを認める?」 「何を言うのかと思えば・・そうだな。僕はメイジだ。メイジは杖がなければ魔法が使えないからね。僕の杖はこの薔薇だ。この薔薇を君が奪えたら勝ちにしよう。君が泣いて謝ればその時点で終了でもかまわないよ」 「わかった」 「こんなの見ようと思うなんて珍しいわね。タバサ」 「別に・・・」 広場にはあのキュルケもやってきていた。そしてその横には短い青髪の少女、名をタバサと言うようだ。 「まあ、なんとなく、普通の人間とは違う感じがするけど、所詮は平民でしょ?ギーシュには勝てないんじゃないかしら・・・」 「ただの平民ならそうかもしれない。けれど、何か変な感じがする」 「ふーん」 この戦いに、というよりヒロに何かを感じるタバサ。 キュルケはあまり興味がないようだった。 「よし、開始だ!」 ギーシュは言うないなや、薔薇の花を振った。 花びらが1枚宙に舞う。 すると甲冑を着た女戦士の人形が現れたのだった。 身長は人間と同じくらい、硬い金属製らしく陽の光を受けて、甲冑がきらめいていた。 (金属製のゴーレムか。サイズは人間とほぼ同等・・・さて・・・) 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。文句があるかい?」 「まさか」 「ふふん、いい覚悟だ。そうそう言い忘れていたね。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 言うが早いか、女戦士の形をしたゴーレムがヒロに向かって突進してきた。 ゴーレムの右の拳がうなりをあげて、ヒロの腹に放たれる。 ヒロはそれをなんなくかわす。次々と拳を突き出すゴーレム。それを紙一重で避けるヒロ。 「くくく、どうした?青銅のゴーレム。発想は悪くはないが、動きが単調すぎるな。操る物体の動きは、そのまま使い手のセンスが問われるものだがな」 悠々とゴーレムの攻撃をかわしながら、そんなことを言うヒロ。 「くっ。平民が調子に乗るなよ!」 ゴーレムの攻撃は休むことなく続いていく。しかし、ヒロにとってはこの程度の攻撃、避けることは造作もないことであった。 そんなことが10分ほど続いただろうか。 「おーい、ギーシュ。いつまで遊んでるんだ?」 「つまんないから早く終わらせろよ。ギーシュ」 攻撃する。かわす。の繰り返しに次第に退屈さを感じてきている生徒たちが野次を飛ばす。 (遊んでるんじゃない!本当に当たらないんだ。かすりすらしない!) 飛んでくる野次などどこ吹く風か、ギーシュは戦いに集中することで精一杯だった。 「あふ・・・粘るわねー・・・飽きてきちゃった。そりゃ平民にしちゃよくやるけど、避けるばっかりじゃねぇ」 退屈さが溜まってきたキュルケ。 「ねぇ、もう帰らない?」 「まだ、あの使い魔、全然疲れてない」 そして、突然動きを止めるヒロ。 「は、はははっ頑張ったようだが、避け続けるだけでは体力を消耗するだけだね。さすがにこれだけの時間動いていれば、そりゃ疲れもするだろう」 動きが止まったヒロを、ギーシュは疲労によるものだと判断したのだろう。ギーシュは笑い声を上げた。 その時、人ごみの中からルイズが飛び出してくる。 「ギーシュ!」 「ルイズじゃないか。悪いけど、君の使い魔をお借りしているよ」 「いい加減にして頂戴!大体、決闘は禁止されてるはずでしょ!?」 「決闘が禁止されているのは貴族同士の場合のみ、だけじゃないか。平民との決闘が禁止されてるなんて、そんな決まりごとはありはしないよ」 ルイズは言葉に詰まる。 「そ、それは・・・そんなこと、今までなかったからであって・・」 「ルイズ・・・」 ヒロがルイズの肩を掴む。 「ヒロ、決闘なんてやめなさいよ!貴方はせっかく呼び出した。初めての私の成功そのものなのよ!」 ヒロは困ったような笑みを浮かべる。 「おやおや、わが主人は心配性だな。だが、そこまで言われては、なおさらやめるわけにはいかぬな。不本意ではあるが、使い魔として呼び出された以上、期待に応えねば、私の名が廃ると言うものだ。そういうわけで少しは信用して下がっていろ」 「もう、知らないんだから!」 そう言って下がるルイズ。そんなルイズを見届けると、 「さて、ようやく体が温まってきたところだ。避けるのも飽きた」 「はっ減らず口もそこまでだ!行け!ワルキューレ!!」 ギーシュが杖を振ると、突進するワルキューレ。ヒロは動く気配がない。 (これで終わりだ!) ギーシュは勝利を確信した。 ワルキューレに対し、ヒロは着ていたローブを翻す。そして、ヒロの姿がローブに隠れた。しかし、ワルキューレはかまわずに突っ込んでいく。 その時、ローブを突き破り、巨大な腕がワルキューレの胴体を掴んでいた。 学園長室に舞台は移る。 ミスタ・コルベールは、唾が飛ぶ勢いでオスマン氏に説明している。 ルイズが呼び出した平民の少女のこと、ルイズがその少女と『契約』した際に現れたルーン文字が・・ 「始祖ブリミルの使い魔『ミョズニトニルン』に行き着いた。というわけじゃな?」 「そうなんです!あの少女の額に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ミョズニトニルン』に違いありません。従って、あの少女は契約したことによって『ミョズニトニルン』に覚醒した。と考えるべきです」 「ふむ、確かに同じルーンじゃな。しかし、それだけでその少女が『ミョズニトニルン』だと決め付けるのは、早計ではないかね?」 「そうかもしれません。ですが・・・」 すると、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。一人はギーシュ・ド・グラモン」 「もう一人は?」 「それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少女のようです」 オスマン氏とコルベールは、顔を見合わせ頷く。 「教師たちは『眠りの鐘』の使用許可を求めておりますが」 「アホか、たかが子供の喧嘩に秘宝を使うなんぞ、放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルの足音が遠ざかっていくのを確認すると、オスマン氏は杖を振る。 すると壁にかかった大きな鏡にヴェストリの広場の様子が映し出された。 「な、ななな、なんだそれは」 ギーシュはうめく。 「な、なによあの腕・・・」 ワルキューレの胴体を掴んでいた腕は、ルイズも初めて見る左手であった。 ワルキューレは空中に持ち上げられて、じたばたともがくが、ヒロの手は離そうとしない。 そして、ヒロは短く詠唱を終え、呟く。 「ファイア」 『ファイア』ネバーランドにおける火属性の魔法の1つである。ネバーランドでは、種族、職業にかかわらず魔法が使える。その中でも『ファイア』は火の属性の魔法の中でも初歩中の初歩。しかし、母親から火魔法の素質と父親から受け継いだ膨大な魔力。その2つを持ったヒロの左手か ら放たれたソレは、とてつもない威力をもってワルキューレに襲い掛かった。 ヒロの炎を受けたワルキューレは、燃えることなく、熔けて地面にどろりと落ちた。 そんなワルキューレを見て、ギーシュは戦慄する。 「な、何だ今の!?」 「ま、まさか先住魔法!?」 周りの生徒たちも、平民だと思っていた少女がいきなり魔法を、しかも杖を無しで行使したことに驚きを隠せないでいた。 「先住魔法?残念ながら私が使うのは『普通』の魔法だ」 そう言うと、ギーシュの方を向くヒロ。 ギーシュは慌てて薔薇の杖を振る。花びらが舞うと、新たなゴーレムが6体現れた。最初に出した1体とこの6体をあわせた7体がギーシュの最大の武器である。最初に1体しか出さなかったのは、単純に侮っていたからである。 「全員でかかれ!ワルキューレ!」 6体中5体のゴーレムがヒロに踊りかかる。6体現れたゴーレムを見ても、ヒロは動じない。またも詠唱をワルキューレたちが来る前に終える。 「クリムゾンエッジ」 ワルキューレたちがヒロに触れようとした瞬間、ヒロの周りを炎の竜巻が舞う。その衝撃で5体いたワルキューレはばらばらになり、吹き飛んだ。 そして、ヒロはギーシュに向かって駆け出す。 「ワルキューレ!!」 最後の一体を盾にするギーシュ。しかし、ヒロの炎をまとった右足の蹴りで粉砕。さらに返す左足の踵でギーシュの顔面を蹴る。 「ギャッ」 顔を蹴られたギーシュは、吹っ飛んだ後地面に転がる。 眼前にヒロの顔が見え、やられる!と思って顔を抱える。すると、先ほどのワルキューレと同じように、ヒロの左腕はギーシュの胴体を掴み空中に持ち上げていた。 「な、な、な」 「さて、次はとっておきだ」 ギーシュは自分を掴んでいる腕が熱を帯びてきたことを感じる。そして、先ほど熔けた自分のゴーレムが脳裏に浮かんだ。 「わ、わかった!降参だ!参った!ごめんなさい!!」 なりふり構わず喚くギーシュ。 そんなギーシュを見て白けるヒロ。手を離すとギーシュは地面に落ちた。 ヒロはギーシュから離れ、歩き出す。 周りで見物していた生徒たちは、驚愕と畏怖の表情でヒロを見る。ルイズも怯えたような目でヒロを見ていた。 (まあ、しょうがないな・・・私は所詮魔族、こいつらから見れば化け物のようなものだ。しかし、ルイズにもついに見せてしまったからな。さて、今日からどうやって寝床を確保するか) 異様な視線で見られる中、ヒロはヴェストリの広場から出て行こうとするヒロ。そんなヒロを見ていたルイズはヒロに向かって駆け出した。 「ヒロ!」 そのままヒロの背中に抱きつくルイズ。 「ルイズ・・・」 「あ、あんた、ちゃんとギーシュに勝ったわね。やるじゃない。さすがは私の使い魔ね」 「ああ、私はルイズの使い魔だからな」 抱きつきながらも偉そうなルイズ。そんなルイズを見て笑みを浮かべるヒロ 「ね、ねえ、アンタのその左手・・・」 ヒロの左手を指すルイズ。 「ああ、この左手は、ちゃんと自分の腕だ」 「あんた、以前平民でも人間でもないって言ってたわよね」 「ん・・そのことか。まあ、長い話になるし、いずれ話す時がくる」 「そう、じゃあ話してくれるまで私、待つわ・・・立ったまんまで疲れたし、帰りましょう」 「そうだな・・」 そう言うと、ルイズとヒロは話しながらヴェストリの広場から出て行ったのであった。集まっていた生徒とギーシュを置き去りにして。 腰が抜けているのか、1人では立てないギーシュを数人の生徒たちが支える。 「い、一体彼女は何者なんだ・・・?」 ギーシュの呟きはこの場にいる全員の思いを代弁していた。 「す、すごいわね・・あの炎、私より扱いうまいじゃない・・ねぇタバサ、あんたならあの使い魔に勝てると思う?」 タバサはヒロが去った方を見つめながら呟く。 「やってみないとわからない」 オスマン氏とコルベールは秘宝『遠見の鏡』で一部始終を見終えると顔を見合わせた。 「オールド・オスマン、ギーシュは1番レベルの低い『ドット』のメイジですが、それでも、ただの平民に後れを取るとは到底思えません。そしてあの動き、あの魔法、あんな平民は見たことがありません!」 「そりゃ、あんな腕しておる平民はおらんじゃろうな。魔法も使っておったし」 オスマン氏のもっともな突っ込みに思わずたじろぐコルベール。しかしくじけない。 「し、しかし、彼女はおそらく『ミョズニトニルン』に違いありません!」 「とはいえのう・・・『ミョズニトニルン』とは『神の頭脳』と言われる使い魔じゃ、なんでもあらゆるマジックアイテムを使いこなすとか・・ マジックアイテムを持っていないようじゃから確かめようがないがのう」 「ともかく、これは一大事ですぞ。早速王室に報告して、指示を仰がないことには」 「それには及ばん」 「な、なぜですか?これほどの事実、世紀の大発見ですよ?」 「確かにな、しかし王室のボンクラ共に『ミョズニトニルン』・・伝説クラスのオモチャなんぞ与えてしまっては、すぐにでも戦になるじゃろう。 宮廷で暇をもてあましてる貴族ほど厄介なものはおらぬからな」 「なるほど、私が浅はかでした」 「この件はワシが預かる、他言無用じゃぞミズタ・コルベール」 オスマン氏が目を光らせる。 「は、はい。かしこまりました」 そういうとコルベールは、では失礼します。と学園長室から出て行った。 オスマン氏は戦っていたヒロの姿を思い出す。 (ふーむ・・・っていうか、ぶっちゃけあの使い魔、ワシより強くね?) それぞれの思いが交錯する中、騒々しい1日は幕を閉じたのであった。 前ページ次ページ爆炎の使い魔
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部屋で身体を拭き着替えを済ませたルイズは、ベッドにうつ伏せになって考えていました。 (おとーさん・・・私を慰めようとしてくれてたのかな・・・) ルイズは貴族として厳しく育てられてきました。その事に恨みも憎しみもありません。なぜなら、貴族として生まれた自分には当然の事だと考えていたからです。 そんなルイズには、あんなに優しく頭を撫でられた事は遠い遠い記憶の中でしかありませんでした。 だからこそ、おとーさんの行動に吃驚しましたし。子ども扱いだと反発したのでした。 (17歳の娘にあの慰め方は無いよね・・・・) そんな事を考えていると激しくドアをノックする音がしました。 「ヴァリエール様、メイドのシエスタです。大変です!!ヴァリエール様の使い魔さんが・・・使い魔さんが・・・」 扉の向こうで涙声で訴えるメイドの声に吃驚したルイズはすぐさま部屋へ引き入れるのでした。 「落ち着いて何があったか話なさい!」 シエスタは涙ながらにこう言いました。 「ギーシュ様とヴァリエール様の使い魔さんが決闘することに・・・」 「何ですって!!!!」 シエスタから事の顛末を聞き、ルイズは決闘を止める為にシエスタと一緒に広場へ走りました。 「大体ギーシュの奴モンモランシーとケティに二股かけて、それがばれたからって何で香水拾ったおとーさんに八つ当たりしてるのよ!!」 ルイズが走りながら文句を言っているとシエスタがこういいました 「使い魔さんは、ギーシュ様から最初は何を言われても何も反論しませんでした。ですが、ヴァリエール様事を言われた途端急に・・・」 「えっ?」 ルイズはそれを聞いて急に立ち止まりシエスタの顔を驚いた様子で見ています。 そして、ルイズはまた走り出しました。 「とにかく止めなきゃ・・・・」 広場に着くとすでにギーシュとおとーさんそして生徒たちの野次馬が揃っていました。 「なんでこんなに集まってるのよ!!」 ルイズは、野次馬を掻き分けなんとかおとーさんの横に出ることが出来ました。 「おとーさん!!決闘なんてやめなさいよ!!」 ルイズの言葉におとーさんは黙って首を振ります。 「ギーシュはバカで女ったらしで二股するような奴だけど、結構強いのよ」 ルイズの台詞を聞いてギーシュは顔を引きつらせながら髪をかきあげこう言いました。 「ミス・ヴァリエール、随分な言い草だね」 「間違ってないでしょ?? それに、決闘は禁止されているはずよ」 ギーシュは青筋を立てながらこう言いました。 「それは貴族同士の話だろう?貴族と使い魔なら問題ないさ。それにもう止められないよ!!」 ルイズは止めることが出来ないと諦めました。 「おとーさん、決闘はどちらかが降参するまでだから。後、貴族は杖を落としたら負けだからね」 そして、ルイズはおとーさんにこう声をかけて生徒たちの方へ向かいました。 「おとーさん、がんばって・・・」 ギーシュは錬金で一体のワルキューレを作り出し 「僕はメイジだ!!だから魔法で戦う。そして、僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュ。 従って、僕が作り出したワルキューレが君のお相手をするよ」 そして、ギーシュは決闘の開始を宣言しました。 ワルキューレは駆け出すとおとーさんに殴りかかります。しかし、ワルキューレの拳がおとーさんに当たる寸前で止まります。 「何っ!!」 ギーシュはギョッとしました。自分はドットクラスでしたが、錬金には自信がありました。そして、ルイズがやっと呼び出した使い魔が相手という事で侮っていたのでした。 その使い魔は、ワルキューレの殴ろうとした右腕を左手で掴むと握りつぶしてしまっていたのでした。そして、右手でワルキューレを殴り飛ばし学院校舎の壁に叩き付けたのでした。呆然としていたギーシュと生徒達の前でおとーさんはこう呟きました。 「おとーさん、本気」 突然おとーさんの左手のルーンが光り始めました。するとどこからとも無く巨大な鎧が出現しおとーさんの身体を包み込みます。 【重装陸戦おとーさんα】 この姿の名前なのですが、ここに居る誰一人として知りませんでした。 しかし、巨大なおとーさんの姿を見て先ほどまでうるさかった生徒達は呆然としています。 ギーシュは叫び声をあげながらワルキューレを6体出現させました。破れかぶれでおとーさんに突撃させましたが。紙くずのように引き千切られて行きます。 その光景に、ギーシュは腰を抜かしてしまい歯をガチガチと震わせています。 おとーさんは6体のワルキューレを片付けるとゆっくりギーシュに歩いていき徐に右腕を振り下ろしました。 その場に居たギーシュを含めた全員が目をそむけました。轟音と共に土ぼこりが舞い上がります。野次馬の生徒達は(ギーシュは死んだ)と思いました。 ギーシュ自身も死を覚悟していましたが不思議と痛みがありません。 (これが死というものなのかな・・・) ギーシュはそう考えながらゆっくり目を開けました。目の前の地面にクレーターの様な大穴が開いていました。そして、目線をあげるといつの間にか元の姿に戻っているおとーさんが居ました。 「謝りなさい」 おとーさんはポツリと呟くと、どこかを見ています。ギーシュが、その方向を見るとモンモランシーとケティそしてルイズが居ました。 「仲良く・・」 ギーシュが再びおとーさんを見ると、おとーさんはそう呟きました。 目を瞑り、深呼吸をして落ち着きを取り戻したギーシュはこう言いました。 「敗者は、勝者に従う。僕はおとーさんに従おう・・・この勝負、僕の負けだ」 その後、ギーシュは三人に対して誠実に謝りました。 「面白い使い魔ね・・・ そう思わない?」 キュルケはタバサにこう言いました。タバサは本を閉じ頷きながら指を差します。 「まるで親子」 タバサの指先には、手をつないで部屋へ戻るルイズとおとーさんの姿がありました・・・
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 松下はぽーんとワルキューレに蹴り飛ばされ、観衆の中へ落ちた。 「マツシタ! な、なんてことを」 うろたえたルイズが駆け寄ろうとするが、興奮した観衆が邪魔で近づけない。 「もう! どきなさいよッ!!」 (油断した……まだ術策はいくつか用意してあるが、 ギーシュと六体もの武装したワルキューレを一人で一掃するにはやはり力不足だ。 ぼくの作った『電気お守り』があれば、奴らの『霊波』を攪乱・遮断できるのだがな…。 となれば、ギーシュの『杖』を狙うか…) ダメージはたいしたことない。しかし作戦は練り直す必要がある。 ふと這いつくばっている地べたを見ると、ハツカネズミが上を向いて、 女子生徒のスカートの中を覗いている。 オールド・オスマンの使い魔『モートソグニル』だ。 そして松下の『右手』が、ネズミの尻尾を偶然押さえつけている。 ちなみにスカートの中は『黄色と黒のストライプ』だった。派手だ。 「な、なに見てるのよエロガキッ! ギーシュに叩きのめされちゃいなさい」 おお、彼女はさっきのモンモランシーではないか。 顔を赤くして松下を非情にも蹴り飛ばすが、 彼の手には『モートソグニル』と、モンモランシーが肩に乗せていた 黄色に黒い斑点の蛙…使い魔『ロビン』が握られていた。 「ちょ、ちょっと! 人の使い魔を盗むなんて、恥知らず! 返しなさい! 返しなさいったら!」 ネズミと蛙を手にした松下が、ギーシュとワルキューレたちの前に降り立つ。 「おやおや、我が愛しのモンモランシーから使い魔を取り上げるとは。人質のつもりかい? 彼女のためにも、すぐにきみを叩きのめさなくてはいけないじゃないか」 「ま、マツシタあ……」 だが松下は、ネズミと蛙に何事かを囁くと、魔力を込めた皿に各々を乗せた。 そしてネズミを学院の中へ、蛙を反対方向の草むらの中へと投げ入れる。 「きゃあ、ロビン! 帰っていらっしゃい、私のロビン!」 モンモランシーは蛙を追って、草むらの中へ駆け出した。 「…何のつもりだ? まあいい、きみを叩きのめす予定に変更はない。 行け、ワルキューレ!」 ギーシュは護衛用に二体を残し、四体を松下の周りに配置させる。 手には槍や剣を装備しており、ガシャガシャと音を立てながら松下を取り囲むと、 一斉に武器を振り下ろした! 松下は無言で身を屈め、ワルキューレの股下から脱出する。 「くそっ、チョコマカと!」 しばらく鬼ごっこが続くうち、観衆の中から悲鳴が聞こえてきた。 「な、なんだよ突然叫んだりして…びっくりしたなあ」 「だ、だって!! あ、足元を見てよ!」 「え……うわあああ?!?」 『蛙』がいた。黄色に黒い斑点の小さな蛙が、向こうの草むらから、足元の地面を埋め尽くすほど無数に! 「「「うわあああああああああああああああああああ!!!」」」 「「「きゃあああああああああああああああああああ!!!」」」 《主はこう言われた。「わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 もしあなたが去らせることを拒むならば、わたしはあなたの領土全体に蛙の災いを引き起こす。 ナイル川に蛙が群がり、あなたの王宮を襲い、寝室に侵入し、寝台に上り、 更に家臣や民の家にまで侵入し、かまど、こね鉢にも入り込む。 蛙はあなたも民もすべての家臣をも襲うであろう」と》 (旧約聖書『出エジプト記』より) 観衆は大パニックに陥った。モンモランシーは草むらの中で、蛙まみれになって気絶している。 もともと蛙が嫌いなルイズは、地面を埋め尽くす蛙を見た瞬間、失神した。 キュルケも驚愕して動けず、硬直して倒れ掛かってきた青い髪の少女を抱きとめるのが精一杯。 「な…なんなのよあの子は……なんなのよぉお…」 ギーシュは呆然としている! ワルキューレたちはまごまごしている! 観客たちは逃げ出した! 「ま、まさか…はっ、そういえばあの子、蛙のほかに『ネズミ』も持っていた! ままままさか……」 キュルケの悪い予感どおり、学院の中からも悲鳴が聞こえた。 「ひいいいいいいっ」 窓ガラスやドアや木の壁を突き破って、『ハツカネズミ』の大群がこちらに向かってくる!! 「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」 『蛙』と『ネズミ』の大群は、障害物以外は何者をも害することなく、 松下の周囲に巨大な円陣をなして集結する。そして松下が『右手』を振るうと、 小人の軍勢のようにギーシュとワルキューレに襲い掛かった!! 「その総数、およそ7万はいた」と、当時その場にいた丸子・ルヌー氏は語った。 なお、彼は失禁していた。 「たすっ、たす、助けてくれええええええええええええええぷっ」 ギーシュは圧倒的戦力差に文字通り押しつぶされる。 薔薇の造花の『杖』はたちまちネズミどもに齧り尽くされ、口には蛙が入り込んで黄色い毒液を滴らせ、 せっかくくっついた左耳も右耳もろとも噛みちぎられそうだ。 「降参!! 降参ですっ!! マツシタさまっ!! 命だけは助けてくださあああああぐぇっげぼっ」 魔力の切れたワルキューレたちが土に還っていく。 ギーシュ、絶体絶命。絶対に絶命。 「しずまれっ!!」 松下の力強い声が広場に響き渡る。 すると、『蛙とネズミ』の大群は潮が引くようにギーシュから離れ、 蛙は草むらに、ネズミは学院の外へと去っていった。 『ロビン』は失神しているモンモランシーのもとへ戻り、 『モートソグニル』は慌ててオールド・オスマンのもとへ戻っていく。 全ては何事もなかったかのように、元に戻った…。 失神している多数の教師・生徒諸君を残して。 《『神の右手』ヴィンダールヴ。心優しき『神の笛』。 あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。》 (『始祖ブリミルの使い魔たち』アリャマタ・ド・コリャマタ著 より) (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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通常魔法 ①:自分フィールドの表側表示で存在する「ワルキューレ」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力は、このターン相手の除外されているモンスターの数×500ポイントアップする。 DM第191話「モンスター抹殺の女神」で登場。 ジーク・ロイドが使用。 城之内のモンスターを大量に除外していた為 《ワルキューレ・ブリュンヒルデ》の攻撃力は格段に跳ね上がった。
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前ページ次ページ虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 「諸君。決闘だ!」 ギーシュが高らかに宣言する。 周りの野次馬たちから喚声が上がる。 ギーシュは野次馬の喚声に応え手を振る。 ギーシュはここに至り多少の冷静さを取り戻し、そして開き直った。決闘であれば問題ない、と。 決闘自体は問題だ。本来禁止されている。おそらくこの騒ぎが終われば、学院から幾日かの謹慎なり、何か処罰が言い渡されるだろう。 だがそれはルイズにも言えることだ。 決闘であれば、決闘をした両者が悪い。 もしルイズを香水のビンを拾ったことで責めていたなら、明らかにギーシュ一人に非がある。 だからと言ってルイズにメイドを連れて行かせたら、ふられた上にルイズにやり込められるという恥の上塗り。 それに比べれば決闘という形で両者が処罰を受ける痛み分けの形は随分ましだ。 そして、決闘の中身でルイズに二度と生意気な口を聞けぬようにしてやれば良い。 「二人のレディーと、そして僕自身の誇りのために僕は闘う!」 ギーシュは薔薇を模った杖をルイズに向ける。 「『二人のレディーのため』はやめろと言ったでしょう。あんたは二股がばれた腹いせに決闘するのよ」 ルイズはギーシュに睨み返す。 「早く始めるぞ、ゼロのルイズ。もたもたしていると次の授業に間に合わなくなるからな。いくら授業に出ても魔法の使えるようにならない君には関係ないのだろうがね」 ギーシュは鼻息荒く侮蔑の言葉を返す。 「シエスタ。下がってなさい」 ルイズの言葉に従い、シエスタはルイズから離れる。相変わらずその目には不安がありありと見える。 それを確認したルイズはギーシュのほうへと一歩踏み出す。 「ふん! 覚悟はできているようだな」 ギーシュが薔薇の杖を振る。すると一枚、花弁がはらりと落ちる。 地面に花弁が落ちた瞬間、そこに一体のゴーレムが現れた。 鎧に身を包んだ女騎士のような姿。 大きさこそ平凡だが、所々に細工の入ったワルキューレの造型の見事さに、周囲から静かな歓声が上がる。 「これが僕のワルキューレさ」 ギーシュが得意げに言う。 「魔法の使えない君には一体で十分だろう。一体だけでも手も足も出ないだろうからね」 一体で十分。 この決闘の狙いはルイズを痛めつけることではない。もし取り返しのつかない怪我でもさせてしまったなら、謹慎では済まないだろう。 それは避けなければならない。 この決闘はルイズに実力差というものを見せつければいい。上下関係をはっきりさせてやればいい。 だからこそワルキューレは一体しか出さない。余裕で勝利して見せることこそが重要。 「何よ! 全力できなさいよ!」 ルイズはギーシュに食って掛かる。 「ひょっとして負けたときの言い訳? 『全力出してたら勝てました』とか後で言われても面倒だし、最初っから出せるだけ出してくれない?」 「ハッ! 笑わせるな、ルイズ。ゼロを相手に本気を出せるわけないだろ。……そうだな、君が万が一にも僕のワルキューレを一体でも倒せたなら本気で闘ってあげよう」 ギーシュは髪をかきあげ、余裕綽々といったポーズを作る。 あくまでもどちらが上かを思い知らせるための闘い。できる限り余裕の姿勢は崩さない。 そんなギーシュを見て、ルイズは内心で安堵の息をつく。 ギーシュへの挑発は賭け。だが、賭けは成功した。しかも理想の形で。 ワルキューレを複数出されては勝ち目は薄い。だが、一体しか出してないからといってそれを好機と闘っても、いつさらなるワルキューレを作るかわかったものではない。 だが、挑発によってギーシュから「ワルキューレを一体倒したなら本気を出す」という言質を取った。 体面ばかりを気にするギーシュが野次馬の前でそう宣言してしまった。ならば、そう簡単に言葉を覆すことはできない。 ギーシュは今出しているワルキューレが倒されるまで本気を出せない。 状況が差し迫ればそんな宣言を覆して新しいワルキューレを作るだろう。だが、どんなに差し迫った状況になろうとも、ワルキューレを作るのに一瞬の躊躇があるはずだ。 それで十分。 それで勝てる。 「さて、お喋りもお終いだ。さっさとかかって来たまえ」 ギーシュが言うと、ワルキューレがギーシュとルイズのちょうど中間あたりに立ち、構える。 先手は譲ってやる、ということだろう。 だが、ルイズは杖を構えることなく、再び口を開いた。 「その前にギーシュ。この決闘。勝ち負け決めて、それでお終いじゃつまらないわ。なにか、賭けましょう」 「賭け?」 ギーシュが訝しげな表情を浮かべる。 「そう。賭けよ。あぁ、『誇りを賭けて』なんてのはよしてよ。二股がばれて八つ当たりするようなあなたの誇りと私の誇りとじゃ価値が違いすぎるもの」 ギリ、とギーシュの歯が鳴るが、それは野次馬たちの耳には届かない。 安い挑発に乗る気はないが、二股云々言われるのだけは堪える。野次馬たちも二股という単語に反応してぎゃぁぎゃぁと喚く。もうこの決闘がどういう形に終わろうと、暫くは二股ネタでからかわれるのだろう。 忌々しい。 ルイズのせいで散々恥をかかされた。ならば、この決闘でルイズを完膚なきまでに虚仮にしてやろう。 「そうだな、ルイズ。僕が勝ったら……まぁ、僕の勝ち以外ありえないが、今後授業で魔法使わないでくれ。この間の錬金のように授業を潰されたら堪らないからね。 先生から魔法を使うように指示されたら『私が魔法使っても爆発して授業に迷惑をかけるので他の人を指名してください』と言うんだ」 ギーシュの言葉に野次馬が沸く。 同級生たちは少なからずルイズの魔法に迷惑している。 「そいつはいい! ギーシュ、とっととルイズを倒してしまえ!」 「これでルイズに授業を妨害されなくて済む。魔法の修行もはかどるってものだ!」 マリコルヌら、普段からルイズをゼロと揶揄するものたちはここぞとばかりにギーシュに便乗して騒ぎ立てる。 ギーシュはギャラリーの反応に気を良くし、得意げな笑みを浮かべている。 「私が勝ったら……」 ルイズはギーシュを睨みつける。 「私が勝ったらシエスタに謝りなさいよ」 ルイズは言った。 「シエスタ?」 ギーシュはその言葉の意味がしばらく理解できなかった。 それは周囲の野次馬たちも同じだった。「シエスタ」という単語が何を意味するのか理解できない。野次馬たちがざわつく。 しかし、そのざわつきも少しずつ収まっていく。その単語の意味を理解したものから口を閉ざし、その「シエスタ」に視線をやる。 騒々しかったヴェストリの広場に一瞬の沈黙が流れ、全ての視線が一箇所に集まる。 「は、ははっ……。成程な……」 沈黙を破ったのはギーシュだった。 「平民に頭を下げろとはね……。成程成程……。君はよっぽど僕を侮辱したいらしいな」 貴族が平民に頭を下げるなど有り得ない。貴族が上で平民は下。この関係は絶対である。 この場にいる生徒たち。その中に平民に頭を下げたことがあるものはいないだろう。そしてこれからもそうやって生きていくのだろう。 だから彼らは、ルイズの真意はギーシュに恥辱を与えることにあると、そう認識した。 シエスタに視線が集まりはしたが、誰もシエスタを見てはいない。ルイズがギーシュを辱めるための『だし』としての存在。そのように見ていた。 誰も、単純にして明快なルイズの真意を理解していなかった。 「ふん! なんとしてでも僕を侮辱したいようだが、どうせ僕の勝ち以外有り得ないからな。どんな条件だろうとかまいはしないさ」 ギーシュが見得を切る。 ルイズが突然口を出してきたところから、理解の及ばぬことばかりだった。平民に頭を下げるなどという最大級の恥辱。なぜそこまで突っ掛ってくるのか理解できない。 だが、この決闘で勝てばそれで済む話だ。 理解できないものを理解する必要などない。所詮はゼロ。端から理解の外にいる存在なのだ。 「では、いざ尋常に勝負といこうか。相手が負けを認めるか、相手の杖を落としたら勝負有り、でいいかな?」 「……勝負なんてシンプルなほうがいいわ。相手が負けを認めたら、だけにしましょう」 「オーケイ。ならそれでいい。ではもう覚悟はできてるかい?」 「ええ。準備はできてるわ」 そんな言葉を交わして、決闘の幕は上がった。 だが、両者動かない。睨み合いが続いている。野次馬たちは、いつ動くのかと固唾をのんで見守っている。 「動かないわね」 キュルケが小声で呟いた。 「……おそらく既に動いている」 タバサがさらに小さな声で言う。 その言葉の意味を理解できず首を傾げるキュルケ。 タバサだけが感じ取っていた。実践を積むことでしか身につかない感覚でもって。 ルイズはもう動いている。 ルイズが何をしているのかは解らない。だが、何かしているのは間違いない。 事態は既に動いている。決着へ向けて。 ギーシュは焦れていた。 先程交わした会話は、間違いなく決闘の開始を合図するものだった。 それなのにルイズが動かない。 端からルイズに先手を譲るつもりであった。 ルイズを派手に痛めつけるわけにはいかない以上、如何に実力差を見せ付けるかこそが肝要なのだ。そして勝負は格下から動くものだ。 だからルイズが杖を向けルーンを唱えようとしてからワルキューレを動かす。そしてルイズから杖を奪い、地面に押さえつける。痛めつけられない分、ルイズには土でも食わせてやろう。 だが、ルイズが動かない。 ならばそんな筋書きに拘らず、とっととワルキューレを動かしてしまおうか。 いや、それもできない。 野次馬たちは、今の状況を緊迫した睨み合いとでも思っているのかもしれないが、ギーシュはただ待たされているだけなのだ。動きようのない状況で待たされている。 ルイズは杖を向けるどころか杖を構えてもいない。それどころか、その手にはまだ何も握られていないのだ。 流石に杖を持ってもいない相手に攻撃を仕掛けることはできない。それでは卑怯者の謗りを受けかねない。 (早く杖を構えろ。それとも臆したか) そんなギーシュの思いとは裏腹に、ルイズは相変わらず杖を持とうとすらしない。 やはり臆したのか。 覚悟ができたなどとは口だけだったか。 (ん? ルイズの奴、何と言っていた? 『覚悟はできたか』と聞かれて、何と答えた? 『準備はできていてる』と答えなかったか?) ギーシュはふと先程のルイズの言葉を思い出す。 『準備』。闘う為の準備なら、まず杖を持たねば始まらないだろう。 魔法の使えぬルイズが肉弾戦を仕掛けてくる可能性も考えられる。そうだとしても、武器も持たず構えもせず、何の準備をしたというのだ? なんだか…… 足がむずむずしてきた。 「!?」 ギーシュの右脚に突然激痛が走る。 「な、なんだ!?」 突然そんなことを言い出したギーシュに、野次馬たちの注目が集まる。 ギーシュは杖をルイズに向け牽制したまま、己の脚へと注意をやる。 痛い。 痒い。痛い。 熱い。 「な、なんなんだ!?」 ついにギーシュは堪えきれず、ズボンを捲り上げる。 するとそこにはどくどくと流れる血で赤く染まった右脚があった。そしてその赤の中に点在する黒い点。 ギーシュは己の目を疑った。 そこにいたのは己の小指ほどもあろうかという巨大な蟻。 その蟻が2匹、3、いや4匹。ギーシュの右脚に食いついていた。 「うわあぁぁああああ!?」 ギーシュが叫ぶ。叫びながら己の脚をバシバシと叩く。 ギーシュの赤く染まった脚に気づいた野次馬たちも騒然となる。 「なんだこれ!? なんなんだこれぇ!?」 ギーシュは血で染まった己の脚、そして見たこともないような巨大な蟻に混乱していた。 蟻が全て潰されても、己の脚から目が離せない。答えるものなどいないのに「なんだなんだ」と問い続ける。 しかし混乱はいきなり現実に引き戻される。 突如爆発音がしたのだ。 爆発、即ちルイズ。 ギーシュは己がルイズのことをすっかり忘れて取り乱していたのだということに気づく。己の脚に向けていた視線を上げる。 ギーシュの視界にまず映ったのは、爆発四散するワルキューレ。 (ルイズにやられた? なら……) ギーシュは己の手を見る。その手には薔薇を模した杖が握られている。 杖が握られている。それを目で確認するまで己が杖を握ってるのかどうかすら判らなくなっていた。 (杖はある。ワルキューレを……) 作らなければ。 そんなギーシュの思考はすぐに潰える。 ギーシュの視界にルイズがあらわれたのだ。 ルイズは走っていた。ものすごい勢いでギーシュの元へ。 (ルイズの前にワルキューレを……) (立ち塞がなければ……) ギーシュは急いで杖を構える。 (間に合うのか!?) 間に合わない。 ルイズとギーシュが激突した。 前ページ次ページ虚無の魔術師と黒蟻の使い魔
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《天界の従者 サンドラ》 効果モンスター 星4/光属性/戦士族/攻1500 /守1600 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 自分フィールド上の「ワルキューレ」と名のついたモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップする。 自分フィールドの「ワルキューレ」と名のついたモンスターが破壊される場合、 代わりに自分フィールドに表側表示で存在するこのカードを破壊する事ができる。 原作・アニメにおいて―~